FAZER LOGIN「すっごく面白かったです!」
翌日、部活時間。部室でるうがルールブックを手に、キラキラした瞳を一同に向ける。
「色々、用語も覚えました! dがダイス……サイコロの略だとか。あと、十面体なんて、変なサイコロもあるんですね!」
「うんうん。楽しめたようで何より!」
るうから本を受け取り、棚に戻すきいろ。
「よっし! 次なる新入部員を求め、一年の教室巡りをしようぞ~」
「おー!」
一同、
「ダメだったね~」
「ダメだね~」
「ダメダメですね~」
「全滅とはな~……」
きいろ、歌留奈、るう、にこが、突っ伏したままぼやく。
「この四人で、仲良くやっていこう!」
体を上げ、拳を突き出すきいろ。一同、それに拳を合わせる。
「えい、えい、おー!」
皆、気力を取り戻す。
「先輩、わたし、クトゥルフやってみたいです!」
「いいよ~。イチからシナリオ作るの好きだけど、時間かかるから、明日遊ぼう。今日は、『HANABI』とかどう?」
「なんです、それ?」
「カードゲーム。ルールはね~」
実物を取り出し、ルールを説明していくきいろ。
HANABIは、その名の通り、複数の色の花火を打ち上げるのが目的のゲーム。ただし、自分の手札を自分では見ずに仲間に見せ、自分の手札を推理する作品だ。
プレイヤーは皆協力者なので、敵がいない、平和なゲームである。
「あー、惜しい!」
打ち上げ完遂、一色。このゲーム、コツが少々あるのだが、初心者のるうにはまだ難しいようだ。
「いや、初めてにしては、上出来、上出来! るうちゃん、センスあるよ~」
「ありがとうございます!」
るうの瞳が、キラキラ輝く。
「ところできーちゃん、足、閉じようよ。はしたないよ?」
「えー。スパッツだし、女しかいないからいーじゃん」
開脚状態で、気楽にプレイしていたきいろに、歌留奈がお説教。しかし、聞く耳持たず。
この二人、いつもこんな調子である。
「いーじゃん、いーじゃん。歌留奈はカタすぎるんだよ」
「もー、にこちゃんまで~」
そんな仲良しトリオのやりとりに、ふふとなる、るうであった。
◆ ◆ ◆ 「えーと。初心者にはどういうキャラがおすすめなんですか?」「精神力高くて、図書館と目星と聞き耳持ちかな。必須技能って、シナリオにも書いてあるし」
翌日、クトゥルフセッション。るう、念願のクトゥルフデビューである。
「で、るーこや」
「るーこ?」
きいろの唐突な「こ」付けに困惑する、るう。
「あー、気にせんであげて。コイツ、親しくなった相手には、変な愛称つけるんだ。アタシなんて、『にこちん』だぜ? タバコかっての」
「私は、『かるかん』。歌留奈で、猫飼ってるからって。るーこは、割と理解できる範囲だと思うよ」
「はあ」
納得いったんだか、いってないんだかといった様子で、うなずくるう。
「えー、にこちんも、かるかんも、カワイイじゃーん」
「きーちゃんの、可愛いの感覚は、ちょっと私たちには難易度高い」
歌留奈の言に、うんうんとうなずく、にこ。
「え~? セキセイインコ可愛いじゃん。それと一緒だよ~」
「うん、わからない」
歌留奈のツッコミに、「ちぇ~」と口を尖らせるきいろ。
「それより、さっさと進めよーぜ。時間がもったいない」
「そだね。キャラできた? 見せて。……うん、……うん、おけ。把握した。じゃあ、始めまーす。現代の静岡。漁港・
きいろと歌留奈の、グダグダ漫才を中断させるのが、にこの重要な仕事である。本人たちは、無自覚だが。
◆ ◆ ◆ 「SANチェックど~ぞ~。成功で1d3、失敗で1d10ね。ひっひっひっ」「きゃ~」
「まって! アタシ、ロストしそうなんだけど!?」
クトゥルフの呼び声にはSAN値という数値……正気度があり、恐怖体験をすると下がっていく。これがゼロになると、キャラロストとなる。
「は~。助かった~。ギリSAN残った」
「ほんとに、精神力重要なんですね」
「シナリオによるけどね。で、日記の続き読む?」
こうして、セッションは進んでいき……。
「事件解決、おめでとー! SAN回復してくださいな」
「面白かったです~!」
初セッション成功に、感動するるう。
「そりゃよかった。アタシらも楽しかったよ。なにごとも、最初がカンジンだもんな!」
「るーこ、メタ知識で割りと解決するよね~」
「えへへ。あっ、これニャル様だー。とか、ピンときちゃうんで」
照れる当人。
「まあ、メタ推理もほどほどにね。キャラと自分は別けないと」
「もー、かるかん、楽しい雰囲気に水差すのナシ!」
「ごめんなさい」
珍しく、逆ツッコミされる歌留奈。
「また、やりたいです!」
「うん。またやろーね! さ、ちょうど下校時刻だし、帰りますか~」
「はーい!」
初心者るうのTRPGデビューは、大変楽しいものとなった。めでたしめでたし。
四月になり、五人はそれぞれ進級した。 三年組は、今年度から塾通いを始め、本格的に受験対策に取り組む。 四人が一度に幽霊と化してしまった卓ゲ部はというと、コミュ力が強化されたるうが、一年を複数人引っ張り込むことに成功し、存続となった。 るうといえば、にこと相変わらず清いお付き合いをしている。 そして、「コンテストの結果はまだだろうか」などと思いながら過ごし、夏休みに入った頃……。 皆のスマホに、るうからLINEの着信があった。貼られていたのは、一つのURL。「びっくりしないでくださいね!」とのメッセージ付きで。 塾から帰って、URLを開くと、「卓上ゲームコンテスト」のホームページが開かれる。 下にスクロールしていくと、「結果発表」の文字が、目に映り込む。 さらにスクロールすると……。 「最優秀賞 秘境探検 ジ・エクスプローラーズ」の文字が! 一同、Zoomに入ってくる。「やったよ! マジ!? 夢じゃない!?」「夢じゃないよ! ほっぺたつねったもん! 」「選評は……?」 きいろ、歌留奈の言葉に続き、にこが選評を読み上げる。「現役中学生が、これだけのものを作り上げたことに驚きました。年齢を考慮の外に置いても、内容も優れており、満場一致での最優秀賞となりました……だってさ!」「明日はお祝いしましょう!」 ノヴァルナが、上機嫌で手を叩く。「ですね! 一年の子たちも連れていきます!」 新リーダーも、ウッキウキ。「じゃあ、ボク、明日ケーキ買ってくるから!」「おー!」 少女たちの挑戦は、最高の結果で終わった。 きいろは、エクスプを足がかりにヒットゲームクリエイターとなるが、それは後のお話。 めでたしめでたし。
「わたし、誕生日が近いんですよ」 きいろがエクスプを投函した日、いつもの部室でるうが言う。「おお! お祝いしなきゃだね!」「お年玉はたくぜ~」「いえ、そんな高価なものでなくても!」 慌てて手を振る当人。「やっぱりホラーがほしい?」 歌留奈が問う。「ですね! ただ、リングとか呪怨とか、有名所はだいたい抑えちゃってまして」「ウン……難しいですね」 ノヴァルナが悩む。「夜に相談しよう! るーこ、当日をお楽しみに~」「ありがとうございます!」 というわけで夜。Zoomにて。「るーこ、ホラー小説とか映画の有名所、だいたい抑えちゃってそうだよね」「何が喜ばれるかしらね」 悩む一同。「あの、るうさんは、最近ボードゲームの道に入ったんですよね?」「そだよー」 ノヴァルナの問いに、気さくに答えるリーダー。「では、ホラーボードゲームなど喜ばれるのではないでしょうか」「それだ!」 きいろ、パチンと指を鳴らす。「よし、じゃあ探そう」 各自ググるのであった。 三月三日。当日。「おかえり、るう」「ただいま」「おじゃましまーす」 るうの父母から歓迎される一同。にこだけ、るうの家にお邪魔したことがあるので、先行していた。 室内には、ちょこんと棚の上に、お内裏様とお雛様が飾られている。「おーう、待ってたぜー」「今日は、『自分ちだと思ってくつろいでくんなー』しないのね」「さすがに、なあ」 歌留奈に冷やかされるも、借りてきた猫状態のにこ。「いやあ、るうにもお友達が出来て、一安心だよ。彼女さんができたって聞いたときは、さすがにびっくりしたけどね!」 恥ずかしさ絶頂の、るうにこ。父は、そんな娘たちにお構いなく、和やかトーク。「じゃあ、ケーキでも切り分けましょう」 談笑も一段落ついたところで、ホールショートケーキを取り出す母。「ふふ、ケーキもにこちんとお揃いだ」「恥ずかしいから、だーってろ」 小声で抗議。 そして、ハッピバースデー・トゥ・ユーに続き、十三本のろうそくを吹き消するう。「お誕生日、おめでとー!」「ありがとうございます!」 拍手が起こる。「ケーキが切り分けられ、一同再度談笑。「そいえばさ、にこちん」「なんぞ」「にこちんのおじさんたちには、るーことの仲、まだ言ってないの?」 むせる、にこ。「お前、ほ
冬休みも大過なく過ぎ。二月十三日のいつもの部室。「みんなー。明日は友チョコ持ってくるよ~」「お、サンキュな」 女子の一大イベント、バレンタイン! ただし、一部を除き、浮いた話と無縁な一同であるが。「ふっふー。にこちんは、るーこのおうちでデート済ませたんだもんねー。本気チョコっしょ? 本気チョコっしょ?」 リーダー、少々鬱陶しい。「ばっ……もう、そうだよ。悪いかよ」「悪くないよー。愛が深くて幸せものだねえ、るーこさんや」「はひっ! わたしも、本命手作りします!」 ひゅーひゅーとはやしたてるリーダー。やはり、ちょっと鬱陶しい。「日本では、女の子がチョコあげるそうですね」「そだねー。ドイツではどうなの?」「すでに出来上がってるカップルの、男性から女性に贈り物をする日です。花が多いですね」 ノヴァルナ、ドイツでの暮らしを回想する。 向こうにも、特に想い人はいなかったが。「うちでは、お母さん同士、花を贈りあっています」「ノヴァ子自身はどうするの?」「日本の風習に、合わせようかと思ってます」「へー。ノヴァ子、チョコには義理と本命があってね……」 日本流バレンタインの、レクチャーをするきいろ。「なるほど、安いチョコでいいんですね」「まあ、最近は義理チョコも廃れてるけどねー。さて、今日のゲームは、すしゴーですよー」 進級も近いので、だいぶ棚が寂しくなったが、今日もにぎやかに、ゲームをするのであった。 翌日。「はーい、クラスのみんなー。みんなのリーダー、きいろちゃんからの贈り物だよ~」 なんだかんだで、義理チョコ・友チョコを配りまくるリーダー。「佐武さん! ありがてえ! 今年も救われた!」 クラスの男子から、拝まれるリーダー。「にひひ。お返し期待してるよ~」「困りました。義理チョコ廃れているというから、持ってこなかったです」「あー。ボクが特別なんで、気にしないでいいよん、ノヴァ子」 「そうですか」と、ほっと胸に手を当てるノヴァルナ。 そして、放課後。いつもの部室。「みんなー! 友チョコどぞー!」「ありがと、きーちゃん。私からも」 皆の間で、チョコ交換が行われる。 そしてもちろん……。「えーと。あまり、上手じゃねーかもしれないけどさ」 照れくさそうに、るうにラッピングされたチョコを手渡す。「お気持ちだけ
「いや~、あれから大変だったよ。お父さんたち、完全にできあがっちゃって」 Zoomで、ため息をつくリーダー。両親ともにへべれけで、階段を登らせるのは危なかったため、客間の布団に寝かせてある。「できあがる? なにか、完成しましたか?」「あー。あーいう感じで、酔っ払って上機嫌な状態を、できあがるっていうんだ。ノヴァ子も大変だったんじゃない?」「ふらふらして、危なかったです」 一同苦笑。このZoomは、現在にこ抜きで行っている。「本題に入ろう。にこちんのプレゼント、何にしようか」「わたしも、それとなく好みを尋ねたんですけど、面白ければなんでもいいとのことでした」「だよねえ、にこちんは」 唸る四人。好みが幅広すぎるのも困りものだ。「逆に考えるんだ。面白ければ、本当になんでもいいのさって考えるんだ」 ジョジョのパロディを唐突に披露するきいろ。「にこちゃんがいたら、どうした急にって、ツッコまれるね、今の」「はは。まあ、それはさておき。四人で候補一つ出してさ、じゃんけんで勝った人の買おうよ」「それ、いいですね!」「わたしも賛成です」「私も」 三人、好感触。「それじゃーねー……」 最新ゲームを調べ始めるリーダーたちであった。 ◆ ◆ ◆「ただいまー」「おじゃましますー」 当日。にこが、るうとノヴァルナを連れて自宅に戻る。「おふぁへり」「きいろは、食べるか喋るかどっちかにしろ」「んぐ……。おかえり」 にこちんも、おかんルートかなあ、などと思うきいろ。 とはいえ、にこの目下のお相手は……。「そういば、るーことはもう、自宅デートしてるのかと思った」「あー……。まだなんだ、親父たちにカムアウトするのもちょっと気が引けて……。ノヴァっちみたいには勇気でねーや」 ちなみに、当の両親は、ともに仕事中。「先輩……。だったら、わたしのうちで自宅デートしましょう! 先輩のこと、打ち明け済みです!」 おおっと! 工藤選手、ここでシュート!「お、おう。じゃあ今度、よろしくな」 これは、るうがペース握るねー。と、にやにや顔を見合わせる、きいろと歌留奈。「ま、積もる話は、ケーキでも食いながらしようや」 冷蔵庫から、ホールのショートケーキを取り出し、置くと、四人のハッピー・バースデイ・トゥー・ユーをBGMに、ろうそくを十四本立て、ライタ
「うぁけまして、おめでとおごじゃいまふ……」 きいろ、寝ぼけ眼をこすりながら、両親に挨拶。「あけましておめでとう」「あけましておめでとう。だらしないわねえ」「年越し番組見てたら、寝不足で……。あふ」 うつらうつらしながら、食卓につく。「ご飯食べ終わったら、ご近所さん回るからね。しゃきっとなさい、しゃきっと」「ふわぁ~い」 もそもそと、おせちをつつくきいろ。新年早々、弛緩した朝である。 ◆ ◆ ◆ 「あけましておめでとうございます!」 一家三人そろって、ご近所訪問。父母の懐が寂しくなる代わりに、きいろの懐が厚くなっていく。「うふふ~。何に使お」「無駄遣いはダメよ? お父さんみたいにカードゲーム買い込んだりとか」「わかってますよ~」「母さん厳しいなあ。仕事に必要なんだよ」 そんな会話をしつつ、ご近所さんを回ったら、家に撤収。きいろの友人一家を、家に誘ってあるのだ。「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」 奥野一家、元気にご挨拶。「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」 ご挨拶返しする佐武家。 その後、大須家、工藤家と到着し、最後にカタン家。「あけまして、おめでとうございます」「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」「アケマシテ、オメデトゴザイマス」 母娘三人で、ご挨拶。産みの母が、一番日本語が流暢なようだ。「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。カタンさん、はじめまして。娘がお世話になっています」 佐武夫妻が、ご挨拶返し。 その後、大人たちはリビングで酒盛り、子供たちはおなじみ客間で談笑。「お酒って美味しいのかなー?」「どうだろね。お父さんは、ビールが好きみたいだけど」「ビールって苦いんだろ? ほんとにうまいのかね?」「ピーマンみたいなものなんじゃないですか?」 そんな話題を繰り広げる。「二十歳までお預けかー」 ぼやくきいろ。「ドイツでは、十六歳からビール飲めますよ?」「マジで!?」「はい」 ノヴァルナの話に、一同びっくり。「日本より、四年も早く飲めるのかー」「ほんと、国によって法律違うよねー」「気分だけでもお酒飲もうってことで、こんなゲームはいかが?」 リーダーが取り出したのは、ボジョレーティン
カレンダーはまたたくまにめくられ、十二月。 我らがリーダーも、スパッツをやめて黒いタイツを履いていた。相変わらず、女子だけなのをいいことに、足を開いている。皆も、タイツ状態だ。 師走というが、きいろたちもテスト勉強で忙しかった。「かるかん。このrightは、右と正しいどっち?」「正しいの方だね」「きいろー。x=9、y=-3で合ってるかー?」 いつもの部室も、この様な感じで忙しい。特にノヴァルナは……。「これ、なんて読みますか?」「えっとねー。しょぎょうむじょう、だよ。意味は……なんだっけ、かるかん」 言葉の壁があるので大変だ。 るうは一年下なので、相変わらず自分の教室。 こんな、師走な日々も過ぎていき……。「づがれだあ~!!」 テスト明け。五人、部室で久々の揃い踏みである。「先輩方、テストお疲れ様です」「るーこもお疲れ~。よーし、遊ぶぞー!」 あれから、冬休みに向けて、棚をだいぶ整理している。 今日は、UNOとババ抜きで遊ぶことに。「あっ、そうだ。二十四日に、クリパうちでやる予定なんだ。るーこも、ノヴァ子も来るよね?」「そうなんですか!? 行きます、行きます!」「クリパ? クリーパーがどうしましたか?」 マインクラフトの、アレを思い浮かべるノヴァルナ。「あー、クリスマスパーティーね」 「オー」と、合点がいく。「じゃあ、プレゼント交換あるから、用意しといてね~」「はーい」 そして、二十四日。「メリー・クリスマース!」 サンタの格好をした佐武家一同が、クラッカーを弾けさせ、皆を迎える。「おじさまたちも、好きですねえ。そういうの」「ははは。一家の体質かもね」 思えば、流しそうめんもやったものだ。「ささ、上がって上がって」「おじゃましまーす」 さっそく、ブッシュ・ド・ノエルがダイニングのテーブルに置かれ、ノリノリな父が、切り分けていく。「じゃあ、まずはクリスマスを祝って……いただきます!」「んー! おいしーい!」「美味しいですね!」 きいろ、ノヴァルナ、皆々も満足。「近所にシャトレーゼあって、ほんと良かったよ~」 シャトレーゼ信者、きいろ。微笑ましい。 一同、しばし談笑。ケーキに続き、母特製フライドチキンが出される。「ほんとは七面鳥食べるそうじゃない? どんな味なのかなー?」 きいろ、







